十二神将(じゅうにしんしょう)は、仏教における天部(仏教において天界に住む者の総称)のことで、十二薬叉大将(じゅうにやくしゃだいしょう)ともいい、薬師如来および薬師経を信仰する者を守護するとされる12の仏尊です。
元々は夜叉(鬼神)でしたが、仏と仏法の真理に降伏し善神となって仏と信者を守護します。
十二神将は、薬師如来の十二の誓願(十二の大願)に応じて、それぞれが昼夜の十二の時、十二の月、十二の方角を守るといわれ、日本では十二支が配当されています。また、十二神将にはそれぞれ本地(化身前の本来の仏・菩薩の姿)の如来・菩薩・明王があります。
各神将はそれぞれ7千、総計8万4千の眷属夜叉を率いているとされ、それは人間の持つ煩悩の数に対応しているといわれています。
十二の誓願(十二の大願)
薬師如来が仏になる前の菩薩の時に、衆生のために立てた12の誓いのことです。
十二の誓願は以下の通りです。
- 光明普照:自身の光明照耀(こうみょうしょうよう)に依って、一切衆生をして三十二相八十随形(ずいぎょう)を具せしむるの願。
- 随意成弁:衆生の意に随うて光明を以て種々の事業を成弁せしむること。
- 施無尽物:衆生をして欠乏を感ぜしめず、無尽の受用を得せしむること。
- 安立大乗:邪道を行ずる者を誘引して皆な菩提道に入らしめ、大乗の悟りを開かしむること。
- 具戒清浄:衆生をして梵行を修して清浄なることを得、決して悪趣に堕せしめざること。
- 諸根具足:六根具足して醜陋(しゅうろう)ならず、身相端正(しんそうたんせい)にして諸の病苦なからしむること。
- 除病安楽:前述の如く諸病悉除。
- 転女得仏:女(にょ)を転じて男(なん)と成し、丈夫の相を具して成仏せしむること。
- 安立正見:外道の邪見に捕らえられて居る者を正見に復(ふく)せしめ、無上菩提を得せしむること。
- 苦悩解脱:もろもろの災難(さいなん)刑罰(けいばつ)を免れしめ、一切の憂苦を解脱せしむること。
- 飽食安楽:飢渇(きかつ)に悩まされ、食を求むる者には、飯食(ばんじき)を飽満せしめ、
又、法味(ほうみ)を授けて安楽を得せしむること。 - 美衣満足:所求満足の誓いで、衆生の欲するに任せて衣服珍宝等一切の宝荘厳(ほうしょうごん)を得せしめんとすること。
十二神将のご利益
十二神将は薬師如来のご誓願の分身とされますので、以下のご利益があるとされています。
- 身体健全
- 病気平癒
- 災難除去
- 延命長寿
- 現世利益
十二神将それぞれのご利益については、「十二神将の一覧」で紹介します。
【守護】自分の十二神将 干支・本地
十二の方角を守る十二神将にはそれぞれ十二支が配当されており、それぞれ本地(化身前の本来の仏・菩薩の姿)の如来・菩薩・明王があります。12の方角を守る=12支の生まれ年の人を守るということなので、下の表で干支と十二神将の対照表であなたを守護する十二神将・本地仏を確認しましょう。
漢名 | 読み | 本地仏/尊 | 干支 |
---|---|---|---|
宮毘羅大将 | くびら | 弥勒菩薩 | 亥 |
伐折羅大将 | ばさら | 勢至菩薩 | 戌 |
迷企羅大将 | めきら | 阿弥陀如来 | 酉 |
安底羅大将 | あんてら | 観音菩薩 | 申 |
頞儞羅大将 | あにら | 如意輪観音 | 未 |
珊底羅大将 | さんてら | 虚空蔵菩薩 | 午 |
因陀羅大将 | いんだら | 地蔵菩薩 | 巳 |
波夷羅大将 | はいら | 文殊菩薩 | 辰 |
摩虎羅大将 | まこら | 大威徳明王 | 卯 |
真達羅大将 | しんだら | 普賢菩薩 | 寅 |
招杜羅大将 | しょうとら | 大日如来 | 丑 |
毘羯羅大将 | びから | 釈迦如来 | 子 |
十二神将 一覧 ご利益・役割・容姿
宮毘羅(くびら)大将
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『宮毘羅大将立像(亥)(十二神将立像のうち)』(奈良国立博物館所蔵) 「ColBase」収録 (https://jpsearch.go.jp/item/cobas-15447) |
十二神将の筆頭にあげられる水運の神。
- 容姿:右手に太刀を持つ
- 役割:第十二願 衣服安泰
- ご利益:すべての人々に衣服を与え、心慰める。
- ご真言:おん くびら そわか
伐折羅(ばさら)大将
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出典: 『伐折羅大将立像(戌)(十二神将立像のうち)』(奈良国立博物館所蔵) 「ColBase」収録 (https://jpsearch.go.jp/item/cobas-15446) |
十二神将最強の神。
- 容姿:宝剣を持つ。宝剣を持つ。
- 役割:第十一願 飲食安楽
- ご利益:すべての人々が飢えや渇きに苦しむことがないようにし、健全な食を与える。
- ご真言:おん ばさら そわか
迷企羅(めきら)大将
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出典: 『迷企羅大将立像(酉)(十二神将立像のうち)』(奈良国立博物館所蔵) 「ColBase」収録 (https://jpsearch.go.jp/item/cobas-15445) |
- 容姿:独鈷 又は 宝棒を持つ。
- 役割:第十願 苦悩解脱
- ご利益:人々の苦悩や災難をことごとく消滅させる。
- ご真言:おん めきら そわか
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