3. 北欧・ドイツ系の妖精・精霊
北欧・ゲルマン地域では、森・川・山など自然を司る精霊が中心で、土地を守る小さな民や、鍛冶の名匠であるドワーフなどが登場します。自然と共に暮らす文化の中で育まれた妖精たちは、人間と距離を保ちながらも、世界の秩序を支える存在として語られてきました。
- エルフ(Elf / Álfar)
ゲルマン・北欧神話に登場する人型の超自然存在。光のエルフ・闇のエルフなどに分けられ、自然や魔力と結びつく。 - ドヴェルグ(Dvergar / ドワーフ)
地下に住む鍛冶と工芸の精霊。宝や武器の名匠で、エルフと同じく「小さな超自然存在」として妖精の一種に分類されることが多い。 - フルドラ(Huldra / Hulder)
スカンジナビアの森に棲む女の森の精霊。美しい女性の姿だが、牛の尾や木のように空洞の背中を持つ。優しく助ける場合もあれば、人を山に連れ去ることもある。 - ニッセ/トムテ(Nisse / Tomte)
北欧の農家を守る小さな家の精霊。赤い帽子と灰色の服を着た老人の姿で描かれ、クリスマスの贈り物を運ぶサンタクロース像の原型の一つともされる。 - ネッケン/ネック(Näcken / Nøkken)
北欧の川や湖に棲む水の精霊。バイオリンを弾く魅惑的な男として描かれ、人を水中に誘う。 - ヴィトラ(Vittra)
スウェーデンの地下や丘に棲む「見えない民」。人間と平行世界に暮らし、土地を荒らされると怒る精霊たち。 - ヴェッテ(Vätte / Vättar)
小さな地霊・土地神。石塚や塚、古い場所を守る精霊で、敬意を払えば家を守ってくれる。 - マーレ/アルプ(Mare / Alp)
眠る人の胸に乗り、悪夢を見せる妖精的存在。「ナイトメア(悪夢)」の語源に関わるとされる。 - ランドヴェッティル(Landvættir)
アイスランドなどで信じられた土地の守護精霊。山・海・川などそれぞれの場所を守る存在。 - トロール(Troll)
北欧の巨人・怪物的存在だが、小型で自然と結びつくトロールは「粗野な妖精」として扱われることもある。
4. スラヴ系の妖精・家の精霊
スラヴ圏の妖精は、人々の生活空間に密接に関わるのが特徴です。家や農地を守る精霊、森・水・沼に宿る自然霊などが多数おり、親しみやすさと恐ろしさの両面を持つ存在として伝承されています。人間との関係性が細やかに語られた民話が多い地域です。
- ドモヴォイ(Domovoi / Domovoy)
スラヴ圏の家の守護精霊。小柄でひげのある老人として描かれ、家族を守る代わりに礼儀や供物を求める。 - レシー(Leshy)
森の主・木の精霊。動物を守る森の神的存在で、旅人を道に迷わせるトリックスターの面も持つ。 - ルサルカ(Rusalka)
水辺に現れる女性の水霊。若くして命を落とした女性の魂と結びつくことも多く、水辺へ人を誘い込む存在として恐れられる。 - ヴィーラ(Vila / Vily)
風や森、山などと結びつく妖精的な女性霊。踊り子として現れ、怒らせると嵐や災いをもたらす。 - ヴォジャノイ(Vodyanoy)
川や池に棲む男性の水の精霊。魚や水域を支配し、溺死を引き起こす存在として描かれる。 - ポレヴィク(Polevik)
畑や野原の精霊。正午の熱気の中に現れ、農民に熱中症や幻覚を起こさせるとされた。 - バンニク(Bannik)
風呂場・サウナ(バーニャ)に棲む精霊。占いを行う存在でもあり、不作法な客には熱湯や石で危害を加えるとされた。 - キキーモラ(Kikimora)
家の中に潜む女性の精霊。良い主婦には手助けをし、怠け者の家では騒ぎや悪夢の原因となる。 - ドヴォロヴォイ(Dvorovoi)
中庭・家畜小屋を守る精霊。ドモヴォイの屋外版のような存在。 - ボルヴァノイ(Bolotnik)
沼地に棲む精霊。水面に人をおびき寄せ、底に引きずり込むとされる。

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