4. インド神話・ヒンドゥー教の神々 – 宇宙と輪廻を司る神々の多様性と深層
ヒンドゥー教神話は、ブラフマー、ヴィシュヌ、シヴァといった三大神(トリムルティ)を中心に、宇宙の創造・維持・破壊を巡る哲学的な世界観を展開します。インド神話の神々は、複数の化身(アヴァターラ)や神話的エピソードを通じて、人間の行動・業・輪廻と密接に結びついています。
51. ブラフマー(Brahma)
- 役割:創造の神、宇宙の始まりを司る
- 象徴:4つの顔と4本の腕、蓮華、ヴェーダの書物
- 概要:世界の創造神として位置付けられるが、信仰の対象としては比較的少数。宇宙の輪廻の中で一つの周期(カルパ)の創造を担当。乗騎は白鳥(ハンサ)。
52. ヴィシュヌ(Vishnu)
- 役割:維持・秩序・慈愛の神
- 象徴:チャクラ(円盤)、シャーンカ(法螺貝)、青い肌
- 概要:世界を守護する神。危機のたびに**アヴァターラ(化身)**として地上に現れる。代表的な化身にラーマ(英雄王)、クリシュナ(神の化身)、仏陀(釈迦)などが含まれる。乗騎は神鳥ガルダ。
53. シヴァ(Shiva)
- 役割:破壊と再生、瞑想、超越の神
- 象徴:三叉の矛、第三の目、蛇、ダマル(太鼓)、リンガ
- 概要:世界を破壊し、再創造のサイクルを保つ神。踊る神「ナタラージャ」としても知られ、時間と宇宙の動きを象徴する。夫は女神パールヴァティー、乗騎は牛ナンディ。
54. ラクシュミー(Lakshmi)
- 役割:富、繁栄、幸運の女神
- 象徴:蓮華、金貨、象
- 概要:ヴィシュヌの妃。特にディーワーリー(光の祭典)の際に家庭の守護神として信仰される。家庭やビジネスにおける成功の象徴でもある。
55. サラスヴァティー(Saraswati)
- 役割:学問、芸術、知恵の女神
- 象徴:白鳥、ヴィーナ(弦楽器)、書物
- 概要:ブラフマーの妃。純粋な知性と芸術的創造を象徴する。学生や芸術家にとって特に重要な女神。
56. ガネーシャ(Ganesha)
- 役割:障害除去・学問・智慧の神
- 象徴:象の頭、大きなお腹、甘味モーダカ
- 概要:シヴァとパールヴァティーの息子。どんな活動も始める前に祈られる最も人気のある神。乗騎はネズミ。
57. カーリー(Kali)
- 役割:時間、破壊、死、解脱の女神
- 象徴:首飾り、血塗られた舌、剣、第三の目
- 概要:ドゥルガーの恐るべき化身。悪を滅ぼす激しい力を持つが、信者には母のような慈愛を示す。時間と死を超越した存在。
58. ドゥルガー(Durga)
- 役割:戦いと勝利の女神
- 象徴:多腕(通常8〜10本)、ライオン、剣と矢
- 概要:神々の力を集めて創造された強大な女神。水牛の悪魔マヒシャを討伐する物語で知られる。ナヴァラートリ(9夜祭)の中心神格。
59. ハヌマーン(Hanuman)
- 役割:忠誠、力、奉仕の神
- 象徴:猿の顔、棍棒、ラーマの名前
- 概要:『ラーマーヤナ』における忠義の英雄。ラーマに仕え、シーター救出に活躍。怪力・不死・飛行能力を持つ。武道や兵士の守護神。
60. インドラ(Indra)
- 役割:雷・雨・戦争の神(ヴェーダ時代の主神)
- 象徴:雷(ヴァジラ)、白象アイラーヴァタ
- 概要:リグ・ヴェーダでは中心的神格。アスラとの戦いで勝利する戦神であり、天地創造に深く関与した。後に地位はヴィシュヌやシヴァに譲られる。
61. アグニ(Agni)
- 役割:火の神、供犠の媒介者
- 象徴:2つの顔、3本の足、炎
- 概要:供物を神々に届ける火神。ヴェーダ祭式では非常に重要で、すべての儀式はアグニを通じて行われる。
62. ヴァーユ(Vayu)
- 役割:風と生命の神
- 象徴:疾風、旗、呼吸(プラーナ)
- 概要:ハヌマーンの父とされる。風の動きと呼吸のリズムを司り、ヨーガやアーユルヴェーダの概念に通じる。
63. ヤマ(Yama)
- 役割:死の神、冥界の王
- 象徴:牛、水牛、棒(ダンダ)
- 概要:最初に死んだ人間であり、死者の魂を裁く存在。冥界「ヤマ・ローカ」を支配する。道徳的行為に基づいて転生を裁定する。
64. クベーラ(Kubera)
- 役割:富と宝の神、北方の守護神
- 象徴:宝石、金銀財宝、矮躯
- 概要:元は悪鬼の王だったが、善行により富の守護者となる。ヤクシャ(精霊)たちの主でもあり、商業・財政の神格として信仰される。
65. スカンダ(Skanda / カールッティケーヤ)
- 役割:戦の神、青年の守護神
- 象徴:槍、孔雀、6つの顔
- 概要:シヴァとパールヴァティーの子。インドラ軍の将軍として悪鬼ターラカを討伐。南インドでは「ムルガン」として広く信仰される。
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