2. 古代エジプトの神々 – 死生観と復活の神話に秘められた神々の役割と象徴
古代エジプト神話は、死後の世界と再生への信仰を中心に築かれた宗教体系であり、オシリス、ラー、イシスなど多くの神々が生命の循環を司っています。神々は人間の姿に動物の頭を持ち、視覚的にも強い印象を残します。ピラミッドやミイラ文化、太陽信仰といった死生観と結びついた神々の意味や役割は、現代人が古代文明の精神世界を理解する手がかりとなります。
21. ラー(Ra)
- 役割:太陽神・創造神
- 象徴:太陽円盤、隼の頭、スカラベ
- 概要:最も崇拝された神で、毎日空を太陽の舟で旅し、夜は冥界を通って再生する。後にアメンと習合し「アメン=ラー」となる。王権の守護者でもある。
22. オシリス(Osiris)
- 役割:冥界の王・死と復活の神
- 象徴:ミイラの姿、白い王冠、緑色の肌
- 概要:兄セトに殺されてバラバラにされたが、妻イシスの力で復活。死後の世界で裁きを下す存在となる。ファラオの死後の姿ともされた。
23. イシス(Isis)
- 役割:母性・魔術・癒しの女神
- 象徴:王座の形の冠、翼、アンク(生命の鍵)
- 概要:夫オシリスを蘇らせ、息子ホルスを守る母として理想化された。人間に魔術と知恵をもたらした女神として広く信仰された。
24. セト(Seth)
- 役割:混沌・嵐・破壊の神
- 象徴:正体不明の動物の頭、曲がった杖
- 概要:オシリスの弟。王位を奪うために兄を殺害。ホルスとの長い争いの末に敗北。暴力的で恐れられたが、砂漠と外国の守護神としても機能した。
25. ホルス(Horus)
- 役割:空・王権・復讐の神
- 象徴:隼の頭、ウジャト(ホルスの目)
- 概要:オシリスとイシスの息子。セトとの戦いで片目を失うが勝利し、地上の王(ファラオ)の象徴となる。王の正統性を保証する存在。
26. アヌビス(Anubis)
- 役割:死者の守護・ミイラ作りの神
- 象徴:ジャッカルの頭、アンク、包帯
- 概要:死者の魂を審判の場へ導く。ミイラ製作の神として、遺体の保存と再生の儀式に不可欠な存在。冥界における「案内人」。
27. トート(Thoth)
- 役割:知恵・記録・月の神
- 象徴:トキの頭、筆記用具、月
- 概要:文字(ヒエログリフ)と時間の概念を司る。神々の書記として、死者の裁きを記録する。トートのおかげで文明が生まれたとされる。
28. ハトホル(Hathor)
- 役割:愛・美・音楽・母性の女神
- 象徴:牛の角と太陽円盤、シストラム(楽器)
- 概要:女性性の象徴として、出産・育児・踊りに関わる。死者の魂を冥界へ導く女神でもある。母なる宇宙の側面も持つ。
29. バステト(Bastet)
- 役割:家庭の守護・猫と女性の神
- 象徴:猫、香油瓶、音楽の楽器
- 概要:初期は戦いの女神だったが、後に猫の女神となり家庭と女性、快楽を守る存在へと変化。猫はバステトの聖獣として神聖視された。
30. セクメト(Sekhmet)
- 役割:戦争・疫病・破壊の女神
- 象徴:ライオンの頭、赤い太陽、炎
- 概要:太陽神ラーの怒りの化身として創造され、人類を破壊する力を持つ。激しい性格を抑えるため、酒で酔わせて鎮められたという神話がある。
31. ヌト(Nut)
- 役割:天空の女神
- 象徴:星を散りばめた体、アーチ型の姿
- 概要:昼夜のサイクルを司る。日々、太陽神ラーを体内に飲み込み、夜に再生させる。空そのものとして崇拝された。
32. ゲブ(Geb)
- 役割:大地の神
- 象徴:緑色の体、蛇、ガチョウ
- 概要:ヌトの兄で夫。大地の身体を持ち、農作物と生命の源。人間世界とのつながりを象徴する存在。
33. ネフティス(Nephthys)
- 役割:死と守護の女神
- 象徴:翼、死者の護符
- 概要:イシスの姉で、アヌビスの母とされる。冥界に関わるが、敵ではなく死者を保護する優しい神格。
34. ケプリ(Khepri)
- 役割:再生・変化・朝日の神
- 象徴:スカラベ(糞転がし)、太陽
- 概要:糞を転がすスカラベの姿に再生の力を見出し、朝日の神として信仰された。太陽神ラーの朝の側面ともされる。
35. アテン(Aten)
- 役割:太陽円盤の神
- 象徴:放射線を持つ太陽円盤
- 概要:アクエンアテン王によって唯一神として崇拝された特異な神。従来の多神教を否定し、一時期「アテン信仰」が国家宗教となった。
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