日本に伝わる狐の伝説 51選|九尾の狐・葛の葉・白狐など妖狐・狐の神話一覧

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日本に伝わる狐の伝説 51選|九尾の狐・葛の葉・白狐など妖狐・狐の神話一覧 妖怪
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日本の神話や民話には、姿を変え、人の心に寄り添い、ときに試すように現れる「狐」の物語が数多く語り継がれています。
本記事では、「狐 神話 一覧」として、九尾の狐・葛の葉・白狐・霊狐・オサキ・送り狐など、各地に息づく伝承をわかりやすくまとめました。

狐にまつわる物語をひもといていくと、
「その時代の人々が何を恐れ、何に救いを求めていたのか」
――そんな背景が自然と浮かび上がってきます。

静かに心に寄り添う狐、神として敬われる狐、畏れられた狐。
さまざまな表情をもつ狐の世界へ、どうぞ気軽に触れてみてください。

 

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神話・伝説の狐

出典:Wikipedia 妖狐神話・伝説の狐

 

1 神話・伝説に登場する狐

日本各地の昔話や縁起、宗教説話に登場する“物語性のある狐”をまとめました。
人を助ける善なる狐から、化けて人と恋に落ちる狐まで、その地域の文化や信仰を色濃く映し出しています。

与次郎狐(よじろうぎつね)

与次郎狐は、秋田県(久保田藩)の伝説に登場する、俊敏で忠義に厚い狐です。
藩主・佐竹義宣に仕え、重要な書状を運ぶ“飛脚”の役目を担っていたと伝えられています。

久保田~江戸という長い道のりは通常15日を要しましたが、与次郎はなんと 6日で往復したとされ、その働きぶりは人々を驚かせました。

やがて「与次郎稲荷神社」が建てられ、稲荷神社としては珍しく 与次郎そのものがご神体 とされています。
秋田では現在も親しまれ、交通安全や仕事運のご利益があるとして信仰されています。

松原の狐たち

「松原の狐たち」は、大阪府松原市に語り継がれる、珍しい“人と狐が共に暮らした”という伝承です。
戦後しばらくの間まで、住民と狐が仲良く生活していたといわれ、それぞれの狐には名前があり、なんと“住民票”までついていたと伝わります。

地域と狐の関係が非常に近かったことを物語る、温かい交流の記録です。
土地の人々に愛され、暮らしの中に溶け込んでいた狐たちの姿が想像できる、優しい伝承です。

黒白の狐 − 林昌寺縁記

「黒白の狐 − 林昌寺縁記」は、愛知県春日井市・外之原町の林昌寺に伝わる不思議な霊験譚です。

猟師の林昌則という人物が山で道に迷った夜、赤い火の玉がふわりと近づいてくるのを目にしました。
狐火だと思い矢を放つと、火は二つに割れ、次第に消えていきました。
そばに寄ると、一匹の黒白の狐が矢を口にくわえ、まるで何かを訴えるように立っていたといいます。

驚いた昌則が“山の主に矢を射てしまった”と悟り平伏すると、狐の姿はふっと消えました。
その後、山頂で稲荷大明神の像と先ほどの矢を見つけ、昌則は殺生を戒めて修行に入ったと伝わります。

狐火が山を包んだという最後の場面も含め、
「出会いが人を変える」
そんな静かで不思議な物語が受け継がれています。

チロンヌㇷ゚(チロンヌップ)

チロンヌㇷ゚は、アイヌ神話に登場する神獣で、狐の姿で語られることが多い存在です。
人間に災難の前触れを知らせたり、時に人の姿に化けて悪戯をしたりと、善悪のどちらにも偏らない “中立の神格” を持っています。

アイヌの人々にとって狐は、自然の中に潜む神々の使いであり、チロンヌㇷ゚はその代表格。
静かに人の暮らしを見守る、森の精のような存在として受け継がれています。

経蔵坊狐(きょうぞうぼうぎつね)

別名:桂蔵坊(けいぞうぼう)、飛脚狐(ひきゃくぎつね)

経蔵坊狐は、鳥取県に伝わる化け狐で、「因幡五狐」の一匹とされています。
城に仕え、江戸との間をわずか2〜3日で往復したという驚くべき俊足の持ち主です。

その働きぶりから“飛脚狐”とも呼ばれ、現在は御城山に祀られています。
人のために働き、地域を守るような物語が残されており、狐伝承の中では珍しく“忠義の象徴”として語られる存在です。

宗旦狐(そうたんぎつね)

宗旦狐は、京都・相国寺に伝わる化け狐で、名茶人・千宗旦に化けて茶席に現れたとされる存在です。
その点前は本人さながら、弟子たちが見惚れるほどだったという逸話が残っています。

その後も

  • 雲水に化けて修行をする
  • 托鉢に回る
  • 寺の財政を助ける
  • 近所の豆腐屋を救う
    など、人間以上に“誠実で働き者”の一面を見せます。

最後は、好物の鼠の天ぷらに惹かれて神通力を失い、悲しい最期を迎えたという話が有名。
相国寺はその献身を讃え、祠を建てて 宗旦稲荷 として祀りました。

人に憧れ、人のように生きた、どこか切なく温かい化け狐の物語です。

幸菴狐(こうあんぎつね)

幸菴狐は、群馬県に伝わる老狐で、白髪の翁の姿に化けて人々の前に現れたといいます。
自らを120歳と名乗り、訪ねてきた者には仏説を語り、吉凶や未来まで告げたという、どこか“霊僧”のような風格を持つ存在でした。

人に呼ばれればその家を訪れ、戒を授けることもあったと伝えられます。
しかしある日、入浴の際に熱湯に驚き飛び上がった拍子、全身の毛と尾が露わとなり、正体が老狐であることが発覚。
驚いた人が主人を呼ぶと、幸菴狐は鳴き声を残して飛び去ったといわれます。

その字は人の字とは違えど、拙くはない──そんな筆跡が残っていたという話もあり、人と狐の狭間を歩いていたような不思議な存在です。

ショロショロ狐

ショロショロ狐は、因幡五狐のひとつに数えられる化け狐。
美しい娘に化けて人前に現れると伝えられています。

物語としての細部は多く語られていませんが、
“風のように姿を変え、ふわりと現れては消える”
そんな雰囲気の狐として、民話に静かに名を残しています。

おとん女郎(おとんじょろう)

おとん女郎は、因幡五狐のひとつで、
“経蔵坊狐(桂蔵坊)の妻”とも伝えられる妖狐です。

美しい女に化けるのが得意で、化かしの術にも長けていたとされ、
狐たちの世界の中でもひときわ妖艶な存在として語られてきました。

尾無し狐(おなしぎつね)

尾無し狐は、その名の通り“尾のない狐”とされる因幡五狐のひとつです。
年増の女性に化け、人を化かしては不思議な出来事を巻き起こしたといわれます。

尾が無いという特徴は妖怪譚でも珍しく、
“何かを隠すために尾を失った”“呪いで尾を奪われた”
などの解釈もあり、ただならぬミステリアスさを感じさせます。

恩志の狐(おんじのきつね)

恩志の狐は、因幡五狐の一匹で、灯りをともして人々を化かすとされる妖狐です。
夜の道にふっと明かりを浮かべ、人を惑わせては、いたずらのように消えてしまう──
そんな“狐火的”な性質を持つ存在として語られます。

五狐の中ではもっとも悪戯好きで、里人を困らせることもしばしばだったようです。

玉藻前(たまものまえ)

玉藻前は、平安末期に鳥羽上皇に寵愛されたとされる伝説上の美女で、その正体は九尾の狐と語られます。

人の子として育てられ、美貌と学識を兼ね備えた女官となった玉藻前は、やがて上皇の寵姫となります。
しかし、上皇が原因不明の病に倒れたことで、陰陽師・安倍泰成に正体を見破られ、狐の姿をあらわして宮中から逃亡。
やがて那須野原で討伐軍に追われ、矢と刀によって討たれ、その身は周囲の命を奪う殺生石へと変じたと伝えられています。

その魂はさらに遡ると、中国の殷の妲己、天竺の華陽夫人、周の褒姒など、
各地の王を惑わせた美女たちと結びつけられ、
「王を堕落させ、国を滅ぼす妖狐」としてアジアを渡り歩いた存在とされています。

日本では最終的に石となり、のちに玄翁和尚の法力で打ち砕かれた――という結末が、
“強大な悪霊も、いつかは鎮まる”という物語として受け継がれています。

篠崎狐(しのざきぎつね)

篠崎狐は、武州篠崎村(現在の東京都江戸川区篠崎)に住んでいたとされる4匹の悪戯狐の総称です。

日頃から人をからかっていた狐たちは、ある日、行商人に大声で脅かされて逃げ出してしまいます。
その日の夕方、行商人は知人宅の留守を任されますが、そこで亡くなったはずの女房の“亡霊”に襲われ、必死に逃げ惑います。

そこへ通りかかった農夫が「どうせあの狐たちの悪戯だろう」と水をかけると、行商人は正気を取り戻しました。
行商人は反省し、狐たちが昼寝していた場所に小豆飯と油揚げを供えて詫びたと言われています。

人を本気で傷つけるわけではない、しかし洒落にならないくらい怖いことも平気でやってしまう──
人と狐の“いたずら合戦”のような、どこかユーモラスな伝承です。

葛の葉/葛の葉狐(くずのは)

葛の葉は、安倍晴明誕生譚「信太妻(信田妻)」に登場する狐で、のちに“葛の葉狐”として広く知られる存在です。

信太の森で助けられた狐が、美しい女性に姿を変えて安倍保名のもとに現れ、
やがて妻となり、童子丸(のちの安倍晴明)をもうけます。
しかし、童子丸が7歳の頃、ふとしたきっかけで正体が狐であることが露見し、
葛の葉は一首の和歌を残して森へ帰っていきます。

恋しくば 尋ね来て見よ
和泉なる 信太の森の うらみ葛の葉

のちに童子丸は母の遺した宝を受け継ぎ、天文道を極め、安倍晴明として朝廷に仕える陰陽師となります。

作品によっては、葛の葉が

  • 稲荷大明神の第一の神使
  • 吉備真備や中国の人物の生まれ変わり
    とされることもあり、
    “人に恩を返し、才能ある子を残して去る狐”という、
    日本の狐女房譚の中でも特に象徴的な存在です。

 

デンパチギツネ(でんぱちぎつね)

デンパチギツネは、千葉県に伝わる化け狐で、飯高壇林(はんこう だんりん)と呼ばれる古い学問所の境内に住みついていたと伝えられています。
若者の姿に化け、真面目に勉学に励んでいたという、不思議でどこか微笑ましい逸話が残っています。

人を驚かせるだけの狐ではなく、学問や知恵と縁があることから、地域では「賢い狐」として語られることもあります。

 

オタケギツネ

オタケギツネは、静岡県に伝わる化け狐です。
昔、大勢に振る舞う食事の膳が足りないとき、この狐にお願いすると揃えてくれた──そんな温かい伝承が残っています。

人に悪さをするのではなく、必要なときにそっと力を貸してくれる“助け狐”として、地域の人々に親しまれてきました。
民話に漂う、優しい狐像が感じられる存在です。

おさん狐

おさん狐は、西日本、とくに中国地方で語られる“美女に化ける狐”です。
妻帯者や恋人のいる男性へ言い寄ることが多く、痴話げんかや嫉妬が絡む場面によく登場します。
現代で“女狐”という言葉が嫉妬深い女性の蔑称として使われるのは、この妖狐が由来ともいわれます。

地方ごとに伝承の姿が少しずつ異なり、

  • 火を灯した尻尾で脅かす
  • ライオンに化ける
  • 大名行列に化けて人を試す
  • 80歳を超えた大長老として祀られる
    など、物語は多彩です。

悪さもするものの、地域によっては親しまれていたという点が、人間臭くてどこか魅力的な存在です。

 

おとら狐

おとら狐は、愛知県に伝わる“取り憑く狐”で、いわば狐憑きの地域版です。
もとは長篠城の稲荷社に仕えていた狐とされ、戦後に社が放置されたことへの恨みから人に憑くようになった、と言い伝えられています。

憑かれた人には

  • 左目からのめやに
  • 左足の痛み
  • 長篠の戦いに関する語り出し
    など独特の症状が現れます。

恨みから始まった妖狐ですが、後には鎮めのため神社に祀られ、人々によって敬われる存在へと変わっていきました。
“怒りもまた祀りによって鎮まる”という、日本的な霊性を感じさせる狐です。

洗濯狐(せんたくぎつね)

洗濯狐は、静岡県・浜松市(旧・引佐郡麁玉村)に伝わる小さな怪異です。
夜ふけになると、どこからともなく “ザバザバ”“ギュッギュッ” と洗濯をするような音が聞こえてくるといわれ、その正体が狐だと考えられてきました。

姿を見たという話はほとんどなく、ただ音だけが響くというところがこの妖怪の不思議さ。
生活のすぐそばに“得体の知れない気配”が潜んでいるような、昔の人々の感覚をそのまま残した伝承です。

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