神社の境内では狛犬など動物の像を見ることがあります。これらの動物は神様の意志を伝えてくれたり、私たちの願いを神様に届けてくれるとされていて、『神使(しんし)』や『眷属(けんぞく)』と呼ばれています。
人間より天に近いエネルギー体とされ、そばにいて護ってくれることも。
神社でたまたま目にしたり、最近よく見かける、などピンと来たときは関連する神社にいくと神様が喜んでご利益が得られるでしょう。
ここでは、そんな神様と関係の深い動物たちと、祀られている主な神社を紹介します。
神様の使いになった動物
龍
手水舎や拝殿など、神社の至る所にあることからもわかるように、神様と龍は極めて近しい存在です、「水のそば」に生息する眷属。
龍は「龍神」とは似て非なるものでありつつ、成長、発展した場合「龍神」とも成り得るのです。
龍と人間は近しく、龍は最も「天地」「神様と人」をつなげる役割を担っているといわれています。
狛犬
言わずと知れた神社の門番。神前の守護や魔除けの役割をもっています。阿形(口を開けている=お喋り)と吽形(口を閉じている=無口)の二体一対になっています。これは「円滑な人間関係を表す」ともされていて、互いに喋っていても無口になっても会話が成り立たない、片方が話すからこそ意志の疎通が取れ、片方が黙るからこそぶつかることなく”生活””仕事”ができる象徴なのだとか。
阿形は雄、吽形は雌の狛犬です。
キツネ
“お稲荷さん“=キツネさんと勘違いしている人が多いのですが、実はお稲荷さんは女神なのです。お稲荷さんの眷属が狐であるゆえんは諸説ありますが、お稲荷さんは「食物の女神(御け津神)」であるためその「みけつ」が「御狐」「三狐」に転じた説のほか、荼枳尼天が狐に跨がっているからとも言われています(荼枳尼天とお稲荷さんは本来は別物です)。
*伏見稲荷大社(京都府)、全国各地の稲荷神社・稲荷社
ウサギ
「因幡の白兎」でのオオクニヌシとの話が有名ですね。そのためオオクニヌシが祀られている神社には兎さんの像が置かれていることが多いです。白兎神社(鳥取県)では祭神として祀られています。住吉大社(大阪府)の祭神である底筒之男命・中筒之男命・神功皇后の神使としても有名。
*岡崎神社(京都府)、杉崎神社(福井県)、三尾神社(滋賀県)
鶏
古事記と日本書紀ではアマテラスが天岩戸に隠れてしまった時、「常世の長鳴き鳥」を並ばせて一斉に鳴かせ、見事アマテラスを外に出させたとあります。そのことから鶏は太陽を呼び寄せる神使とされていて、太陽神であるアマテラスが祀られている伊勢神宮で走り回っているのです。
*伊勢神宮(三重県)
鹿
春日大社(奈良県)の祭神、武甕槌命(タケミカヅチノミコト)の神使。鹿島(茨城県)から春日大社までこの神様を乗せて来られたとされています。また安芸の宮島の神使でもあります。
*春日大社(奈良県)、鹿島神社(茨城県)、厳島神社(広島県)
オオカミ
武蔵御嶽神社(東京都)や、秩父の三峯神社(埼玉県)では全国でも珍しい白い狼が眷属として祀られています。憑き物を祓う「大口真神(おおぐちのまがみ)」として崇拝されるほか、「お犬様」と呼ばれ、盗難除けなどのご利益があるとされます。
*三峯神社(埼玉県)、両神神社(埼玉県)
イノシシ
護王神社(京都府)など、和気清麻呂(ワケノキヨマロ)を祀る神社ではイノシシが眷属とされることが多いです。宇佐神宮に向かう清麻呂をイノシシが助けたという伝承によります。護王神社では”狛犬”ならぬ”狛猪”が祀られていて、「いのしし神社」と呼ばれ親しまれています。
*護王神社(京都府)、馬見岡綿向神社(滋賀県)
ヘビ
ヘビも様々な神様のお使いをしています。とりわけ有名な話は、大物主大神(オオモノヌシノオオカミ)の化身とされており、この神様を祀る大神神社(奈良県)では「巳さん」として親しまれ、ヘビの好物である卵とお酒が供えられています。
また弁天・弁財天の使いとも言われているので、福徳や金運を上げてくれる眷属です。
*大神神社(奈良県)、白蛇弁財天神社(栃木県)
ネズミ
大国主命は、火に囲まれた時にネズミに助けられたという伝説があり、この神様を祀る大豊神社(京都府)ではネズミが眷属とされて、境内にはかわいい狛鼠が鎮座しています。
*出雲大社(島根県)、大豊神社(京都府)、
カラス(八咫烏)
カラス、特に三本足の八咫烏(やたがらす)は素戔嗚尊(スサノオノミコト)の神使とされています。また、神武東征の時、タカムスビが命じて神武天皇を熊野国から大和国に案内した導きの烏という説も。サッカー日本代表のエンブレムとしても有名ですね。
*熊野本宮大社(和歌山県)、八咫烏神社(奈良県)
ハト
ハトは、神天皇が国内を平定する時に、水先となったのが鳩だと言われています。それ以降、鳩は”八幡神の使い”とされています。宇佐神宮(大分県)から石清水八幡宮(京都府)に応神天皇(八幡様)を勧請する際に白い鳩が道案内をしたという説も。
愛情や平和、調和の意識が高く、特にロマンチックな助言もくれる神使ですよ。
*石清水八幡宮(京都府)、全国の八幡神社
鷲
稲穂は大鳥(鷲)が天から授かってきたという話があります(「大鳥による稲穂飛来伝説」)。そのため、農業の神様であるアメノホヒやその子のアメノヒナトリに縁が深いとされている眷属です。
*大鷲神社(東京都)、鷲神社(茨城県)
鷺(サギ)
かの有名な「ヤマトタケルの白鳥伝説」。ヤマトタケルは東国征討の帰りに、大和を目前にして亡くなり、その魂が白鳥になって飛び立ったとされているのですが、その白鳥とは”白鷺”のことを指しているのだとか。そのため、鷺はヤマトタケルに最も近しい神使いなんです。
*白鷺神社(栃木県)
鷽(ウソ)
鷽(ウソ)は菅原道真と縁が深いとされています。諸説ありますが、道真が蜂に襲われた時に鷽が蜂を食べて救ったという説や天満宮の建築材を虫が食べてしまった時、鷽が虫を食べて退治したなどの説も。
そのため菅原道真が祀られる神社(天満社)では「鷽替え神事」という独特の神事があります。
*太宰府天満宮(福岡県)、高畑天満宮(福島県)
ウナギ
三嶋神社(京都府)では、水神の化身としてウナギが眷属の扱いを受けています。全国でも珍しい「うなぎ神社」とされ、鰻を扱う業者から信仰されているそう。
鰻はこの神社のご祭神であるオオヤマツミの神使いと言われていて、安産、子授けを願う人をサポートしてくれる存在です。
*三嶋神社(京都府)
蜂
源義家が蜂の巣を夜間に袋に詰め、敵陣営に投げ込み勝利を収めたことから岩手県紫波町には蜂が祀られている神社があります。
また、日本書紀では「養蜂」「オオモノヌシ」に触れてあることから、”オオモノヌシとも縁がある使い”という見方もあります。
*蜂神社(岩手県)、日光二荒山神社(栃木県)
亀
亀といえば松尾大社(まつのおたいしゃ)。境内には「亀の井」という霊泉があり、それを利用するとお酒が腐らないとされているため、酒造関係者から崇拝されています。
また松尾の神様が緩やかな流れに乗る際には亀の、急流に乗る際には鯉の背中に乗ったことから、松尾大社では亀と鯉が共に神使いとされています。
不老長寿をサポートする眷属です。
*松尾大社(京都府)、伊弉諾神宮(兵庫県)
猫
「招き猫」は福を招くこと、「眠り猫」は平和の象徴とされています。かの有名な日光東照宮の眠り猫は、真裏に雀があって、「猫が起きていたら食べられてしまうけど、猫が寝ていられるほどに平和だから共存ができる」という意味もあるのだとか。
のんびり日向ぼっこしている様子は、世の中の平和を願う神様たちの象徴でもあるのですね。
*今戸神社(東京都)、日光東照宮(栃木県)
虎
虎は「寅年」「寅の日」「寅の刻」といった、“時”にちなんだ神使いとされていることが多いのです。
例えば、日光東照宮は祀られている家康公の干支が「壬寅」だったことから虎を神使いと見ています。また、日本で最初に毘沙門天が姿を現した信貴山朝護孫子寺や鞍馬寺でも「寅年、寅日、寅刻に助けられた」とあり、毘沙門天の使いともされています。
*日光東照宮(栃木県)、鞍馬寺(京都府)
蛙
日本全国、たくさんの神社で蛙の石像が見られますがその由緒は様々です。
「かえる」という響きから”あらゆるものが無事に返る(帰る)”という意味で縁起が良いとされています。神社の池などにたくさん生息する縁から、その神社の眷属と見られることも多いようです。
*品川神社(東京都)、日吉神社(岐阜県)
牛
牛はスサノオノミコトや菅原道真の神使いとして見られることが多いです。
「牛頭天王」がスサノオと同一神とされるようになったからとの謂れや、道真の誕生日と没した日が「丑の日」だったから、また、道真が白牛に救われたことからとても大切に思っていたからだ、などと言われています。
*牛島神社(東京都)、北野天満宮(京都府)
猿
猿は、オオヤマツミ、オオヤマクイ、コノハナサクヤビメ、サルタヒコ、アメノウズメの神使いとして有名です。
富士山、浅間神社、比叡山に「申」や「猿」が結び付いていたり、サルタヒコ(猿田彦)は名前や容姿から「猿」と縁が深かったから、とされています。
*富士山本宮浅間神社(静岡県)、白髭神社(滋賀県)
馬
古来から馬は「神様の乗り物」とされていました。
そのため、お祭りの際など「馬を奉納する」という風習があって、様々な神様と繋がりがあるのです。
各神社によってその意味合いは変わりますが、例えは八幡神社では武運や開運祈願のために奉納されたり、恵美須神社では商売繁盛の祈願のために奉納したとされています。
*西宮神社(兵庫県)、北野神社(東京都)
天狗
天狗は伝説の存在で、たくさんの説を持っていますので、自分が一番しっくり来るもので構いません。天狗を「神」と見たり、「烏天狗」「木の葉天狗」ともされています。
いずれにせよ、縁が深いのは修験道や山岳信仰のある地です。「陰」や「魔」を剣で断ったり、団扇で祓うのが得意とされています。
*石鎚神社(愛媛県)、戸隠神社(長野県)
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