6. ギリシア・ローマ・ヨーロッパ古典の悪魔的存在
- Empusa(エンプーサ)(ギリシア神話)
若者を誘惑し血を吸うとされる女悪魔的存在。変身能力を持ち、旅人を惑わす怪物としても語られる。 - Lamia(ラミア)(ギリシア神話)
子どもを喰らう恐ろしい女怪物。母性と喪失、嫉妬を象徴する存在として後の悪魔像にも影響を与えた。 - Mormo(モルモ)(ギリシア民間伝承)
子どもを脅かす夜の悪霊・化け物として語られる存在。子どもを早く寝かせるための“おどし”として用いられた。 - Eurynomos(エウリュノモス)(ギリシア)
死者の肉を食らう冥府の悪霊として、古典文献や後世の悪魔書に登場する存在。 - Gorgon(ゴルゴーン)(ギリシア神話)
メドゥーサら三姉妹の怪物種族。その姿を見た者を石に変える邪悪な魔物として恐れられた。 - Python(ピュートーン)(ギリシア神話)
デルポイの神託所を守る大蛇の怪物。後のキリスト教文脈では「蛇=悪魔」と結び付けられ、悪魔的存在として扱われることもある。 - Achlys(アクリュス)(ギリシア神話)
死と霧の薄闇を象徴する存在。死の苦しみや絶望の側面を具現化した、陰鬱な女神/精霊として描かれる。 - Harpyia(ハルピュイア/ハーピー)(ギリシア神話) 上半身が女性、下半身が鳥の怪物。悪臭と暴風をもたらし、人々や食物を奪い去る「略奪の風」として悪霊的に恐れられた。
- Erinyes(エリニュス/フリアイ)(ギリシア神話) 親族殺しや誓いの破りなど、重大な罪人を追い詰める復讐の女神たち。血の報復と良心の呵責を具現化した、悪魔的な復讐霊として描かれる。
- Keres(ケーレス)(ギリシア神話) 暴力的な死と戦場の死体に群がる女の悪霊たち。血と屍を求めてさまよう「死の精霊」として、恐怖と不吉さの象徴となっている。
7. 中世ヨーロッパの悪魔・夢魔・悪霊
- Incubus(インキュバス)(中世ヨーロッパ)
眠る女性にのしかかり、性的な悪夢や不調をもたらす男性型の夢魔。夜の圧迫感・金縛りの説明として語られた。 - Succubus(サキュバス)(中世ヨーロッパ)
男性を誘惑し精気を奪う女性型の夢魔。美しい女悪魔として、色欲と誘惑の象徴ともなった。 - Imp(インプ)(ヨーロッパ民間伝承)
小さないたずら好きの悪魔的精霊。悪事というより悪戯を好む存在として、魔女や魔術師の使い魔として描かれることもある。 - Krampus(クランプス)(中欧民間伝承)
クリスマスに悪い子どもを罰する山羊姿の悪魔的存在。鎖や鞭を持ち、聖ニコラウスと対になる“恐怖の側面”として登場する。 - Striga/Strzyga(ストリガ/ストシガ)(東欧)
吸血鬼・悪霊として語られる女怪物。二つの魂や二つの心臓を持つとされ、死後に吸血鬼化すると信じられた。 - Mora(モラ)(スラヴ民間伝承)
眠る人の胸に乗りかかり、悪夢や窒息感をもたらす霊。日本の「金縛り」のような現象を説明する存在として語られる。 - Chort(チョルト)(スラヴ神話)
サタンや悪霊の手先として描かれる悪魔的存在。角と尻尾を持つ小悪魔として民話に数多く登場する。 - Rusalka(ルサルカ)(スラヴ神話)
溺死した女性や未婚のまま死んだ女性の霊が変じた水の妖女。人を水辺に誘い込み、溺死させる悪霊的な存在として描かれることが多い。 - Mare(マーレ/ナイトメア)(北欧・ゲルマン伝承) 眠る人の胸にのしかかり、息苦しい悪夢を見せる夜の魔。英語の「nightmare(悪夢)」の語源ともされる、圧迫感と恐怖の悪霊。
- Alp(アルプ)(ドイツ民間伝承) 帽子をかぶった小鬼のような悪霊で、眠る人の胸に座って悪夢を見せる。猫や蝶などに変身し、夜の圧迫感や金縛りの原因とされた。
- Redcap(レッドキャップ)(スコットランド伝承) 古城や廃墟に棲む小鬼で、殺した人間の血で帽子を赤く染めているとされる。残忍で俊敏な人喰い妖精として「血塗れの悪魔」のように恐れられた。
- Nuckelavee(ナックラヴィー)(オークニー諸島の伝承) 皮膚のない馬と人が融合したような姿の海の怪物。病気や干ばつをもたらし、海辺の村に災厄を運ぶ、極めて邪悪な悪霊的存在。
- Dullahan(デュラハン)(アイルランド伝承) 自分の首を抱えて馬に乗る首なし騎士。鎖や鞭を鳴らしながら現れ、人の死を告げたり魂を奪う死の使いとして描かれる。
- Black Dog(ブラック・ドッグ/ブラック・シャック)(イギリス民間伝承) 真っ黒な大型犬の幽霊で、赤い目を光らせながら夜道に現れる前兆の悪霊。見る者に災難や死を告げる「不吉の悪魔犬」として語られる。
8. インド・南アジア(ヒンドゥー教・仏教)の悪魔・阿修羅
- Rakshasa(ラクシャサ)(ヒンドゥー教)
人喰いや幻術を用いる鬼族の総称。多くの悪魔的存在を含み、叙事詩では神々や人間の敵として描かれる。 - Asura(アスラ/阿修羅)(ヒンドゥー・仏教)
神々(デーヴァ)に敵対する闘争的な存在。仏教では「阿修羅」として、怒りと戦いに縛られた修羅道の住人として描かれる。 - Vetala(ヴェータラ)(インド民間伝承)
死体に憑依し、人を惑わせる夜の悪霊。墓地や火葬場に棲み、物語や謎かけの語り手としても知られる。 - Pishacha(ピシャーチャ)(ヒンドゥー教)
死体や不浄と関わる人喰いの悪霊。暗闇や辺境に潜み、人間に憑いて狂気をもたらすとされる。 - Mara(マーラ/魔羅)(仏教)
釈迦の悟りを妨げる「煩悩」「無明」の魔王。恐怖や欲望、疑いなどあらゆる心の障害を象徴する存在。 - Narakasura(ナラカスラ)(ヒンドゥー神話)
クリシュナに討たれた悪王で、地獄(ナラカ)と結び付けられる存在。圧政と暴虐の象徴的な悪魔王として描かれる。 - Mahishasura(マヒシャースラ)(ヒンドゥー神話)
水牛の姿をとる強大な悪魔。女神ドゥルガに討伐される物語は、悪に打ち勝つ神話として今も祭礼の中心となっている。 - Andhaka(アンダカ)(ヒンドゥー神話)
盲目の悪魔で、シヴァとパールヴァティに倒されたと伝えられる。暗闇と無知、暴走する欲望の象徴とされる。 - Putana(プータナー)(ヒンドゥー神話)
乳児クリシュナを毒の乳で殺そうとした女悪魔。クリシュナに抱きつかれて命を落とし、結果として浄化された存在とも語られる。 - Kumbhakarna(クンバカルナ)(ヒンドゥー神話)
叙事詩『ラーマーヤナ』に登場する巨人で、羅刹王ラーヴァナ側の戦士。過食と眠りの象徴的な怪物であり、悪魔軍に属する存在として描かれる。

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