2. ユダヤ教・キリスト教・グノーシス系の悪魔
- Satan(サタン)(ユダヤ・キリスト教・イスラム)
ヘブライ語で「敵対者・告発者」を意味する語に由来し、後に悪の首領・試みる者として悪魔的に位置づけられた存在。 - Lucifer(ルシファー)(キリスト教神学・悪魔学)
本来はラテン語で「明けの明星」を指すが、中世以降、傲慢により堕落した堕天使・悪魔として解釈されるようになった。 - Beelzebub(ベルゼブブ)(ユダヤ・キリスト教)
「蝿の王」と訳される悪魔。元はバアル・ゼブブという神格に由来し、のちに地獄の大公として悪魔学に組み込まれる。 - Belphegor(ベルフェゴール)(キリスト教悪魔学)
怠惰と発明を司るとされる悪魔。モアブの神ベオルと結び付けられ、富や快楽と堕落の象徴とされる。 - Mammon(マモン)(キリスト教神学)
「富」や「財産」を人格化した存在で、金銭崇拝・貪欲の象徴として悪魔的に扱われる。 - Leviathan(リヴァイアサン)(ユダヤ・キリスト教)
旧約聖書に登場する巨大な海の怪物。後世の悪魔学では「嫉妬」の悪魔として七つの大罪の一柱に結び付けられることが多い。 - Moloch(モロク)(ユダヤ・キリスト教)
古代近東の神格が、児童犠牲との結び付きから後に「子どもの生贄を求める悪魔」として描かれるようになった存在。 - Abaddon/Apollyon(アバドン/アポリオン)(ユダヤ・キリスト教)
ヘブライ語の「破壊/滅び」とギリシア語の「滅ぼす者」を意味する名。ヨハネの黙示録では奈落の王、蝗の軍勢の支配者として擬人化される。 - Lilith(リリス)(ユダヤ伝承)
夜の魔女・誘惑者として描かれる女性悪魔。乳児や産婦を襲う悪霊、あるいはアダムの最初の妻としての伝承でも知られる。 - Naamah(ナアマ/ナアマー)(ユダヤ神秘主義)
ゾーハルなどに現れる女性悪魔で、快楽・堕落・淫欲と結び付けられ、リリスと並び称されることもある。 - Agrat bat Mahlat(アグラト・バト・マフラト)(ユダヤ悪魔学)
「夜の四大魔女」の一柱とされる女性悪魔。夜間に踊り狂う軍勢を率いる存在として描写されることがある。 - Eisheth(Eisheth Zenunim)(エイシェト/エイシェト・ゼヌーニム)(ユダヤ悪魔学)
「淫蕩の女エイシェト」の名で知られる女性悪魔で、淫乱・売春・堕落を象徴する存在。やはり四大魔女の一柱とされる。 - Azazel(アザゼル)(ユダヤ・イスラム)
荒野に追放される「贖いの山羊」と結び付けられた存在。堕天使・荒野の悪霊として描かれ、人間に禁じられた技術や武器を教えたとされる。 - Samael(サマエル)(ユダヤ神秘主義)
「神の毒」「神の毒蛇」を意味する名を持つ破壊の天使・死の天使。しばしばサタン的な役割を担う、危険な天使/悪魔として描かれる。 - Mastema(マステマ)(ユダヤ偽典)
『ヨベル書』などに登場する敵対的な霊の長。試みと災いを司る存在として、サタンと似た役割を持つ。 - Legion(リージョン)(キリスト教)
新約聖書に登場する、ガダラ(またはゲラサ)の悪霊憑きの男の中に宿った多数の悪霊の総称。「我々の名はレギオン、大勢だからだ」と名乗る。 - Shedim(シェディーム)(ユダヤ民間伝承)
人間に似た姿を持つとされる精霊・悪霊の総称。必ずしも絶対悪ではないが、危険な存在として語られることが多い。 - Dybbuk(ディブック)(ユダヤ民間伝承)
死者の魂が生者に取り憑くとされる悪霊。未練や罪のゆえに安息できない魂として描かれる。 - Abraxas(アブラクサス)(グノーシス主義・後の魔術)
善悪を超えた超越的存在として描かれることが多いが、中世以降の魔術文書では魔力を持つ名として悪魔的に用いられることもある。 - Archon(アルコン)(グノーシス主義)
物質世界を支配する支配霊・権力者的存在。しばしば人間を無知に縛る「悪的な霊的支配者」として描写される。 - Armaros(アルマロス/アルマロース)(ユダヤ偽典)
堕天使の一人で、人々に禁じられた呪いや魔術、あるいは呪縛を解く術を教えたとされる存在。 - Penemue(ペネミュー)(ユダヤ偽典)
文字や書記術、知識の使い方を人間に伝えた堕天使。知識の濫用と堕落の象徴として描かれる。 - Kokabiel(コカビエル/コカブエル)(ユダヤ偽典)
星々を支配する堕天使。天文学や占星術に関わる知識を人々に授けたとされ、堕落した天の番人として悪魔化される。 - Semyaza(セミヤザ/シェミハザ)(ユダヤ偽典)
堕天使たち(グリゴリ)の指導者格。人間の女性との交わりを主導し、巨人族ネフィリムの誕生をもたらしたとされる。 - Kasadya(カサディヤ/カサダヤ)(ユダヤ偽典)
人々に暴力や破壊的行為、罪深い技術を教えたとされる堕天使の一人。後続文献では名が変形して伝わることもある。 - Old Scratch(オールド・スクラッチ)(英語圏民間伝承)
サタン/悪魔を指す俗称。民話・怪談などで、親しみと畏れを込めて用いられる呼び名。 - Prince of Darkness(プリンス・オブ・ダークネス/闇の公子)(キリスト教伝統)
サタン/悪魔を指す称号。暗闇・支配・隠された知識と結び付けられる象徴的な呼び名。 - Lilin(リリン)(ユダヤ伝承) リリスに連なる夜の女悪霊たちの総称。夢や夜の情欲、乳幼児の危機と結び付けられ、リリスの「娘たち」として恐れられた。
- Nephilim(ネフィリム)(ユダヤ・キリスト教解釈) 堕天使と人間の女性との間に生まれたとされる巨人族。圧倒的な力と暴虐性を持つ「堕落した英雄」として、しばしば悪魔的に解釈される。
- Behemoth(ベヘモット)(ユダヤ・キリスト教) 旧約聖書「ヨブ記」に登場する巨大な獣。大地と暴食を象徴する怪物で、後世の悪魔学では「暴食」を体現する悪魔的存在として語られる。
- Baphomet(バフォメット)(西洋オカルティズム) 山羊頭・両性具有的な象徴を持つ神秘的存在。テンプル騎士団の異端告発や近代魔術を通じて、「知識・秘儀・逆転した神聖」の悪魔的シンボルとなった。
3. イスラム教・アラブ世界の悪魔・邪霊
- Iblis(イーブリース/イブリース)(イスラム教)
アダムへの礼拝を拒んだために堕落したジン、あるいは天上の存在。イスラム教における悪魔の長・誘惑者とされる。 - Shaitan(シャイターン)(イスラム・ユダヤ)
人間を惑わす悪霊・悪魔の総称。イーブリースとその配下、あるいは邪悪なジンを指す呼び名として用いられる。 - Ifrit(イフリート)(イスラム民間伝承)
強力な火のジン。非常に力が強く、しばしば敵対的・悪意ある存在として描かれる。 - Marid(マーリド/マリード)(イスラム民間伝承)
海や水、願いごとなどと結び付けられる強大なジン。傲慢で人間の願いを試すような存在として伝えられる。 - Ghoul(グール)(アラブ世界・他地域へ拡散)
墓地や荒野に棲み、人肉を喰らうとされる食人鬼的な怪物。後に西洋ホラーでも定着した「グール」の原型。 - Qareen(カリーン/カリン)(イスラム伝承)
各人に付き従う影のようなジン。人間の心の弱さを煽り、悪い衝動や誘惑を囁く存在として語られる。 - Zabaniyya(ザバーニーヤ)(イスラム教)
地獄において罪人を責め立てる拷問者的な天使/悪魔的存在の一群。コーランでは厳格な罰を司る者たちとして言及される。 - Jinn(Jinni)(ジン/ジンニー)(イスラム教)
煙の立たない火から創られたとされる精霊全般。善良なジンもいれば、悪意を持つジンもおり、その一部が悪魔的存在として描かれる。
4. ゾロアスター教・イラン系デーヴァ
- Ahriman(Angra Mainyu/アーリマン/アンラ・マンユ)(ゾロアスター教)
善神アフラ・マズダに対立する破壊的な霊的存在で、世界の「悪」と「虚偽」の根源とされる。 - Aeshma(エーシュマ)(ゾロアスター教)
怒り・暴力・戦争・狂乱を司る悪しき霊(デーヴァ)。後の悪魔学では「Asmodeus(アスモデウス)」の起源と結び付けられることもある。 - Bushyasta(ブーシャスタ)(ゾロアスター教)
怠惰と眠気を司る悪霊。人々を眠らせ、善行や礼拝から遠ざける存在とされる。 - Nasu(ナス/ナスー)(ゾロアスター教)
死体に宿る穢れの悪霊「ナスー・ドルジ」。遺体に触れた者や場所に汚穢を広げる存在とされる。 - Druj(ドルジ/ドルジュ)(ゾロアスター教)
「虚偽」「不正」「汚穢」を具現化した悪霊・悪原理の総称。アシャ(真理)に対立する勢力を指す概念的な存在。 - Apaosha(アパオシャ)(イラン神話)
雨と豊穣を妨げる干ばつの悪霊。慈雨の神ティシュトリヤと対立し、世界を乾きと飢えに導く敵として描かれる。 - Indra(as Daeva)(インドラ – デーヴァとしてのインドラ)(ゾロアスター教側の再解釈)
本来はインドの雷神インドラだが、ゾロアスター教側の文献(アヴェスタ)では他の神々と共に邪悪なデーヴァとして退けられる。
5. メソポタミア・古代近東の悪魔・悪霊
- Pazuzu(パズズ)(メソポタミア)
南風と疫病をもたらす悪霊でありながら、女悪魔ラマシュトゥから人々を守る護符としても崇拝された二面性を持つ存在。 - Lamashtu(ラマシュトゥ)(メソポタミア)
妊婦や乳児を狙う恐るべき女悪魔。病気や流産、乳児の死亡などの原因とされ、古代の護符で恐れられた。 - Asag(アサグ)(シュメール)
熱病と破壊をもたらす悪魔的存在。山々や大地をも震わせる怪物として語られる。 - Asakku(アサック)(バビロニア)
病気を引き起こす悪霊たちの一群。特に発熱や衰弱を伴う病と結び付けられる。 - Gallu(ガル/ガルル)(メソポタミア)
冥界の悪魔で、人間を冥界へ連れ去るとされる存在。呪文や護符で対抗された。 - Utukku(ウトゥック)(メソポタミア)
死者の霊に由来する霊的存在の総称で、その一部が悪霊として人々に害をなすとされた。 - Edimmu(エディム/エディンム)(メソポタミア)
正しく埋葬されなかった死者の霊が悪霊化した存在。生者から生命力を吸い取ると信じられた。 - Alu(Alû/アル/アルー)(メソポタミア)
顔のない悪霊で、眠る人間に取り憑き、悪夢や金縛り、窒息感をもたらすとされる存在。 - Hanbi(ハンビ)(メソポタミア)
悪魔パズズの父とされる冥界的な存在。詳細は少ないが、悪霊の系譜の一部として言及される。 - Tannin(タンニーン)(カナン・聖書解釈)
海の竜・蛇のような怪物として聖書に登場する存在。後の解釈では悪魔的な海獣・混沌の象徴とみなされることがある。 - Dagon(ダゴン)(セム系神話/後の悪魔学)
もとは穀物・豊穣と関わる神格だが、中世の悪魔学やオカルト文献では悪魔的存在として再解釈されることがある。 - Chemosh(ケモシュ)(モアブの神/悪魔解釈)
旧約聖書に登場するモアブ人の神。後世のキリスト教的視点からは、異教の神として悪魔的に位置づけられることがある。 - Resheph(レシェフ)(カナン)
疫病と戦争に関わる神格。中世以降、一部の伝承や解釈で「疫病をもたらす悪魔的存在」とみなされることがある。

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