9. ケルト神話の神々|ダーナ神族や妖精信仰に見る自然と魔法の神々
ケルト神話は、アイルランドやスコットランド、ウェールズなどに伝わる古代の神話体系で、自然や精霊と深く結びついた神々が多く登場します。ダーナ神族(Tuatha Dé Danann)や、女神ブリジッド、戦の女神モリガンなどは、後の妖精信仰やアーサー王伝説にも影響を与えました。
- ダグザ(The Dagda)
[アイルランド語:An Dagda]
ダーナ神族の主神。豊穣・戦・魔法を司り、巨大な棍棒と生と死を操る釜を持つ「良き神」。 - ブリジッド(Brigid / Bríde / Bríg)
[アイルランド語:Bríde]
詩・癒し・鍛冶の女神。ケルトの三位一体的神性を体現し、後にキリスト教でも聖女として信仰された。 - ルー(Lugh / Lú / Lleu)
[ウェールズ語:Lleu / アイルランド語:Lugh Lámhfhada]
光・技術・戦の神。万能の才能を持つ英雄神で、収穫祭「ルグナサッド」の由来となる。 - モリガン(The Morrígan)
[アイルランド語:Morrígan または Mór Ríoghain]
戦争・運命・死の女神。しばしばカラスの姿で現れ、戦の勝敗や死を予言する。 - ヌアザ(Nuada)
[アイルランド語:Nuada Airgetlám(銀の手のヌアザ)]
ダーナ神族の王。戦いで手を失い、銀の義手を持つことで王権を回復した象徴的存在。 - オグマ(Ogma / Oghma)
言葉と知恵の神。ケルト文字「オガム」の創始者とされ、詩と雄弁を司る。 - アヌ(Anu / Danu)
母なる女神。大地・豊穣・生命の源とされ、ダーナ神族(Tuatha Dé Danann)の語源となった。 - エポナ(Epona)
[ラテン語:Epona]
馬と豊穣の女神。ガリア系ケルト人に崇拝され、ローマ帝国全体でも広く信仰された。 - マナナン・マクリール(Manannán mac Lir)
海と異界の神。神秘の霧や船を操る伝説の存在で、異界(アナウン)の案内人とされる。 - バドブ(Badb)
戦と死の女神。モリガンと関係が深く、死の象徴として戦場に現れるカラスの神格。
10. スラヴ神話の神々|ペルーンやヴェーレスなど東欧の自然神・精霊信仰の系譜
スラヴ神話は、東ヨーロッパに広く伝わる自然信仰と精霊崇拝を基盤とする神話体系です。雷神ペルーン、地下世界の神ヴェーレス、水の精ルサルカなど、多くの神々や霊的存在が四季や大地の循環と結びついています。
- ペルーン(Perun / Перун)
雷と戦の神。スラヴ神話における最高神で、斧や雷を武器とする天空の支配者。 - ヴェーレス(Veles / Велес)
冥界と富、家畜の神。ペルーンと対立する存在として描かれ、地と死の支配者でもある。 - モコシュ(Mokosh / Мокошь)
大地と女性、家事・出産を司る女神。農耕と母性の象徴として家庭内で信仰された。 - スヴァロジチ(Svarozhich / Сварожич)
火と鍛冶の神。太陽神スヴァローグの子とされ、祭祀の中心的神格とされる地域もある。 - スヴァローグ(Svarog / Сварог)
天と火の創造神。ギリシャ神ヘファイストスに対応するとされ、世界の秩序を築いた存在。 - ドジボグ(Dazhbog / Даждьбог)
太陽神。スヴァローグの子とされ、豊穣と祝福をもたらす天の光の神格。 - ジヴァ(Živa / Жива)
生命と愛の女神。特に西スラヴ系の部族で信仰され、春や再生と結びついている。 - トリグラフ(Triglav / Триглав)
三つの頭を持つ神。天・地・冥界を一体化した存在で、スラヴ的多元性の象徴。 - ヤロヴィト(Yarovit / Jarovit)
春と戦の神。豊穣と若さの象徴でもあり、季節の変化と戦の勝利をもたらす。 - マラ(Marzanna / Morana / Mara)
冬と死の女神。春の到来時に象を火に投げて死を送り出す儀式(マラ送り)が行われる。
11. アステカ・マヤ・インカ神話の神々|中南米文明における創造神と太陽神
アステカ、マヤ、インカといった古代中南米の文明では、太陽や血の供儀を通して世界の秩序が保たれると信じられていました。ケツァルコアトル(羽毛の蛇神)、ウィツィロポチトリ、ヴィラコチャなど、多様な創造神や戦の神が登場し、ピラミッド型神殿や暦と密接に関係しています。
アステカ神話(メキシコ中部)
- ウィツィロポチトリ(Huitzilopochtli)
太陽と戦の神。アステカの主神であり、テノチティトランの守護神。生贄によって太陽を動かす力を得るとされた。 - ケツァルコアトル(Quetzalcoatl)
羽毛ある蛇の神。知恵・風・農耕の神で、文明をもたらした文化英雄として崇敬される。 - テスカトリポカ(Tezcatlipoca)
夜と運命、魔術の神。鏡を持つ神として描かれ、ケツァルコアトルと対をなす強力な神格。 - チャルチウィトリクエ(Chalchiuhtlicue)
水と湖の女神。河川や泉を司り、出生や再生と深く関わる。 - トラロック(Tlaloc)
雨と雷の神。農業に不可欠な存在であり、子供の生贄を通して雨を求める儀式が行われた。
マヤ神話(ユカタン半島、グアテマラ)
- イツァムナー(Itzamna)
創造と知恵の神。マヤ世界の創造主で、文字・医療・暦を人類に与えた存在。 - チャク(Chaac)
雨と雷の神。トウモロコシ栽培において重要な存在で、神殿に多くの献供が行われた。 - ククルカン(Kukulkan)
羽毛の蛇神。ケツァルコアトルに類似し、マヤの神殿建築(例:チチェン・イッツァ)にもその名が残る。 - アハ・プチ(Ah Puch)
死と冥界の神。骨をまとった姿で描かれ、死者の魂を支配する恐れられた神。 - イシュチェル(Ix Chel)
月・水・出産・織物の女神。女性の守護神で、神託や治療にも関わる。
インカ神話(アンデス山脈、ペルー)
- ヴィラコチャ(Viracocha)
創造神。宇宙・太陽・人間を創造した存在で、インカにおける最高神格。 - インティ(Inti)
太陽神。インカ皇帝(サパ・インカ)の祖神であり、国家祭祀の中心とされた。 - ママ・キリャ(Mama Quilla)
月の女神。婚姻や暦と結びつき、女性の守護神として信仰された。 - パチャママ(Pachamama)
大地の女神。豊穣と自然の調和を象徴し、現代でもアンデス先住民により広く崇敬されている。 - イルパ・ウィラ(Illapa / Ilyapa)
雷・雨・軍神。インカの農耕と戦争に重要な神格で、空の水瓶を操ると信じられた。
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